全般的な実態のなかで少数例ながら、たとえば孫が幼いうちは若夫婦が一階を使い、孫も成長し、祖父の脚も弱ってきた頃に老夫婦が一階に移るといったような、ダイナミックな住み方の変化が見られたのだが、それは農家あるいはもと農家にかぎられていた。その基本は一体の家族関係であるのだが、それだけでなく、機能を固定化せず、住み手が機能を決めていくという伝統住居の柔軟なあり方がそのような住み方の変化を可能にしていると解釈することができた。
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これは予期せぬ発見であった。そのとき、現代の住居ももっと〈抽象的な〉住空間にしなくてはと思ったのだが、それを十分に生かしたまとめはできないままとなった。老人に子供の頃の住居、すなわち伝統的な住居や住生活について聞くことをはじめたのはその後のことである。和室の連続した農家では、寝たきりになった老人の気配をどこにいても感じられ、ひとつの部屋が比較的広くて、ベッドもおきやすいなどのことを併せ考えても、住宅の近代化を見直すことは家族生活の場としての住まいを考え、老化に対応する住まいを考えることと重なっている。近代によって失われたものの見直しは老人の価値の見直しにつながるようにも思えた。以下に、よりよい一般解に向けて、まず、すべての住宅に必要な老化への対応とはどのようなものかについて、次に、伝統的な住居の見直しを含めて、やわらかな住宅計画について考えることにしたい。