全国住まい総合辞典 

ライフラインのストップ、一時避難

2011.11.11

電気、ガス、水道、エレベーター……「高羽」のライフラインは完全にストップした。住人たちは「避難勧告」を受けなかったけれど、大多数が、震災初日にそれぞれの判断で小学校や神戸大学の避難所や親戚の家に移り、マンションを離れた。T家では娘たちが、隣町の団地にひとりで暮らすTさんの母のようすを見に行った。車で五分も離れていない母の住まいは、食器が少し壊れた程度だった。水道、電気も通っていた。母もケガを負ってはいなかった。

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ただ、母は七か月前に膝の手術を受け、リハビリ中だった。そろそろTさんの付き添いなしに来るようにと病院からは言われていたが、この非常時では難しい。病院には重傷者があふれ、軽症者のリハビリは受け入れてもらえなくなった。夫は「高羽」にとどまろうと主張したが、トイレが使えないこともあり、四人は母の住まいに身を寄せた。震災二日目、T一家が朝のテレビーニュースをみていると、突然、見覚えのある建物が炎に包まれている姿が目に入ってきた。「あっ、グランドパレスよ」。Tさんたちは慌てて現場に駆けつけた。すでに火災は鎖火していたが、火元の三階上の住人、若原キヌコが黒く煤けた壁を見上げて涙を流していた。燃えた住戸は、オーナーが東京で暮らしていて地元の不動産業者が賃貸物件として管理していた。出火原因はローソクの火ではないかと噂されたが、不審火として処理された。