密かに関心がある。といっても、あっちの方のしばるじゃなくて、こっちの方のしばるについてだ。四十歳以上の読者なら覚えておられるように、少し前まで建設現場の足場はすべて杉丸太を針金でしばって作られていた。私の子供の頃はナワでしばられていた。東大寺大仏殿の明治の修理の時の写真を見ると、あの大きさの建物がすっぽり杉丸太の足場でおおわれているから、ナワの持つ緊縛力というのはあなどれない。現在でも、中国に行くと、高層ビルの足場が竹を竹皮でしばっただけで作られていて不安になるが、崩れたという話も聞かないから、よほど丈夫にちがいない。
[人気サイト]
熊本の新築マンションをエリアから探す
[詳細情報]
岡山の新築マンションをエリアから探す
[詳細情報]
香川の新築マンションをエリアから探す
[詳細情報]
秋田の新築マンションをエリアから探す
[詳細情報]
奈良の新築マンションをエリアから探す
[詳細情報]
足場のほかには、これも今は田舎じゃないと見られないが、土壁の下地の木舞は細い竹を格子状にナワでしばっている。巨大建築をおおうほどのパワーを秘めてはいても、足場はしょせん仮設で、建物が完成した晴れの日にはどっかに消える運命だし、木舞も晴れの日には壁に塗り込められて外からは見えない。しばるという行為は、そっちの方だけじゃなくてこっちの方でも人目をはばかる日陰の営みなのである。日陰であろうと営みがあればまだいいほうで、現代のほとんどの建設現場では、足場はパイプ足場に、木舞はボード類に変わり、しばることは皆無になっている。このことは家庭でもいえて、宅配便が発達してから、ナワやヒモで荷造りすることはなくなり、ガムテープを貼ってすます。かく書きながらわが家を見回しても、しばってあるのは、エー、明日の朝出す分別ゴミの雑誌の山と、あとないか。ひとつあった。蛍光灯のプルスイッチのヒモ。読者にも、自分が最後にしばったのはいつなのか思い出していただきたい。たいてい遠い日のことにちがいない。建設の現場でも家庭でも、しばるはもう絶滅寸前なのである。